1/4 歪んだデルタ（神のみぞ知るセカイ 172話感想）

苦いっすなあ。

今週の神のみぞ知るセカイは172話「The Good, The Bad, and The Ugly」でした。粉砕された三人の関係を修復するために、桂馬くんがなんとかピースの方向を調整する話、でしたが。

前回、ついに始まった舞校祭で、ケンカしたままの歩美と再会した桂馬くん。最初に述べたように、今回桂馬くんはこの三角関係にケリをつけて歩美の再攻略を進めようと目論むのですが、まあ、ピースの向きの問題じゃないよなあ。

桂馬くんは最後に「好感度を上げるだけじゃダメだ」と言っていましたが、まさにその通りでして。ピースをはめ込む方向の問題、精度の問題ではなく、欠けているんですよ。パズルのピースが。そりゃー完成するわけないや。そもそもこれ攻略うんぬんとか言ってますが、ごーるはどこなのよ、という話にもなるわけでして……素人目から見させてもらうと、歩美とちひろとで三角関係にもつれ込んだ時点で、エンディングなんてあってないようなものじゃないかなーと。だって必要なものは愛なのだから。別に「彼女」という存在を欲しているわけじゃないですからね、だったら後ろめたさというものがある以上はどうにもならない。いや、まさに今桂馬くんが陥っている状況……そうにしかならない。八方ふさがりも甚だしいですねえ。



月夜の再攻略をしていたとき、桂馬くんが「恋のデルタフォース！」と謳って持論を展開していましたが。三角関係（当時は桂馬くん、月夜、かのん）の鉄則を述べたその中で「男が最も愚かでなければならない」というのがありまして……今の桂馬くんは確かに愚かです。ダメ人間で、二股クズ男で、歩美の怒りに対して何も反論できない。しかし、そのデルタが正確な三角形ではなく、次元が途中でひねくれ、大きく欠損しているものだとしたら。その理屈は、必ずしも当てはまるとは限らないのです。
それ以前に、桂馬くんは当の昔に「愚か」なんて領域を超えていっているような気もするのですが。罪人だもんなぁ……ツイッターで「女の子ぷにぷに」とかいってる人間は愚かですが、それを実践し、他人を不用意に傷つけたとすれば「愚か」ですむ話ではないのです。
正論を述べれば。
そいつは、デルタの一辺に立つこともできないのですから。

でも一番の混線の原因は、桂馬くんが重すぎて三角形のバランスが取れなくなったことではないのではないでしょうか。それこそが、高原歩美―――彼女の存在です。歩美はきっと迷っているのですよ。三角関係の三辺のうちの一つが崩れ、分断された時、歩美には二つの道が残されます。どちらも身動きできないでいる、桂馬くんへの道とちひろへの道です。
どちらを選ぶのか。
無粋にも程があるその問に対して、歩美ははっきりと答えを出せていません。追いかけてくる桂馬くんを避けながらも、悩むちひろに声をかけていない。三角関係でもなく、かといって明瞭な直線関係でもないその世界に、果たしてエンディングはあるのか。切り捨てることなくそれを探せるのか。もう、諦観するしかないとも思えてきますね。



別に「彼女を手に入れるためではない」と言いましたが、それを軸としてこの感想を続けるとすれば、「三角関係」という概念すら鼻で笑われるようなものかもしれません。栞の再攻略なんかは顕著でしたが、別に「好きだよ」「私も」という会話が必ずしも必要なわけではないのですよ。栞が抱えていた「物語が書けない＝自分の思いを表現できない」という悩みを、桂馬くんは見事に解決して見せました。それは誰が誰を好きというものが最も重要性のあることではなくて、「私はあなたが好きなんです」ということを伝えられる、「愛がなければ踏み込むことのできない領域」に足を踏み入れられたという……なんというか、その事象こそに、意味があったのではないでしょうか。説得して歩美と恋仲になり、ちひろも傷つけない―――そういうエンディングを目指すことが、果たして正しいことなのか。今はまだ、その辺りについては分からなそうですが……。



ピースをなんとかしてはめ込むための残りのキーポイントは、やはり歩美とちひろ、二人が腹を割って会話することくらいしかないような気もしますが。歩美はちひろの全てを飲み込んでいないし、ちひろも歩美の全てを知っていない。三角関係としても、そうでないとしても、やはりこの状況を打破できるのはあの二人の決断次第だと思うのです。桂馬くんがデルタの一辺に立つ資格・バランスを調整する資格をなくしたとすれば、今の状況は歩美とちひろ、二人の直線関係なのですから。それを知っているのにも関わらず、ちひろから逃げ、桂馬くんをなじることしかできない歩美こそが―――決断次第で何かをひっくり返す力を持っていると、そう信じているのですが。さて、どうなる。


今週のけいマスター！



喫茶店の息子として、いかんなくブレンド能力を披露する桂馬くん。こだわりさえ見つければなんでも超人的にこなせますなあ、彼は。