前回、攻略深度が臨界点を越えたちひろの恋を、メリクリウスの有無を理由にぶつ切りにした桂馬くん。ぶつ切りとは唐突に終わらせるだけでなく―――その後に引きずるものがなくなるように強く引きちぎることでした。メリクリウスのために。しかし、それを歩美に目撃されて……。
ちひろを強く拒絶するということは、それすなわちちひろから拒絶されること……とは限りません。お前なんて嫌いだと言われても、水がかけられた火のように人の想いというものが消えることはないからです。果たしてそこまで桂馬くんが思慮してこの行動を起こしたのかどうかは分かりかねますが、彼は間違いなく抱いていますよ。痛みを。
拳で思いっきり相手を殴ったら、殴ったほうの手だって痛いのです。
ちひろの恋心をゼウスハンマーのごとく押しつぶした桂馬くんは、自らの痛みをもって罪悪感を抱いています。まあ、罪悪感を抱くからといってヒョコヒョコとやっていいことでもないんですが。全治何週間とも言い表せない、心の痛みである以上。
そしてそれを目撃した歩美によって、桂馬くんは強く糾弾されます。
「なんであんなこと言ったのよ」
「ちひろの気持ちを分かっててデートに来たんじゃないの?」
ちひろの想いは純粋で尊いから、大切に扱えと―――傷つけたりするなと怒号を飛ばす歩美に、桂馬くんはとっさの判断でこう返します。
「分かったんだ……本当に大切な人が、誰なのか……!」
メリクリウスがちひろにいない以上、そして彼女を屋上から退室させた以上、桂馬くんは必然のように歩美へと思いを告げようとします。「自分の気持ちに嘘をついてた」と。
そう謳って自分の方を見つめる桂馬くんを、歩美は彼の左半身あばら骨を全壊させながら蹴り飛ばすわけですが……いつもみたいに吹き飛ばないから重いキックだなあ。それを「サイテー」と罵り退出する歩美は果たして、どんな思いで桂馬くんとちひろを見てきたのでしょうか。
正義の執行者に見える歩美ですが、自分はやっぱり一つ問いたい。
桂馬くんの判断を弾劾する権利が、果たして歩美にあるのかどうかを。
「本当に好きな人のために、他人を傷つけてまで恋を求める」桂馬くんと、
「本当に好きな人を諦めて、自分を傷つけてまで友を励ます」歩美とで、果たしてどちらが罪深いと言えるのか。
歩美は自分の想いを押し殺してちひろと桂馬くんを応援しましたが、それはきっと強いことではないんですよ。確かに友達のために恋路を諦めるのは勇気と、そして心の痛みを伴う行為です。ただ、歩美は逃げている―――罪をかぶることを。一方で桂馬くんは、厳密にはメリクリウスのためだとしても、他人を殴って自分の手のひらを痛めてまで何かを成し遂げようとしているんですよ。たとえ罪をきせられたとしても。桂馬くんはこんな状況に陥っても、逃げるという選択肢を選ばなかったわけですね。歩美は妥協して甘んじているんですよ。何かを成し遂げない弱さを、「善人でいる」ということで埋めようとしている。断罪という大義名分がなければ他人を蹴ることもできない。
そんな歩美に、桂馬くんを蹴り飛ばす権利はあるのかどうか。
彼女自身も、少し気づき始めているような気もするのですが。
それでも、屋上にいた桂馬くんとちひろを覗きに行ったという歩美の行為は、彼女の何かが傾いていることの裏づけでもあるような気がするのですが。水がかけられた火のように人の想いというものがすぐに消え去ることはありません。何も成し遂げられなかったというスキマ、桂木桂馬を諦めたというスキマを、善人でいることで埋められていないのかもしれません……って埋められないよなぁ。誰かを恋したことでできたスキマが他のことで簡単に埋まったりしたら、人生もっと楽しいと思いますよ。
結局、歩美もちひろも桂馬くんも―――前夜祭を経て何を得るでもなくむしろ失ってしまいました。ただしそれは単なる消失ではなく、部屋の中を整理していたら昔なつかしいゲームソフトが発掘されるかのような、新たな可能性を秘めています。反転した関係の中で、このトライアングルがどうなるのやら。
今回、メリクリウスも顕現してはいるのですが……ノイズが走って今にも消えそうじゃないですか。翼はおろか輪っかさえもないし……歩美が愛を捨てて友情と誠実さを獲得した以上、メリクリウスが消えるのも時間の問題かもしれません。きっとメリクリウスが歩美に憑依した当時は、ちひろの真意も知らず、単純な恋する女の子だったのかと思うと……泣けてきますな、ホントに。やっぱり女神も悪魔もヴィンテージも地獄も、必要ないんですよ。恋愛には。桂馬くんが女神候補を探していたときに言っていたように「巻き込まれずに済む」……抱えた思いに異分子が入りこまないことは、たとえ作中で出番がなくとも歓迎することなんですよ。いまさらですが。
そして今回一番気になったのが、ちひろが屋上から退場するシーン。このコマ、もうコミックス4巻のシーンとまんま同じじゃないですか!うわっえげつない若木民喜えげつない!ちひろは桂馬くんに「今までの恋と違う」と言いましたが、それでも桂馬くんはちひろにこれまでの恋と同じ道を歩ませてしまっているわけです。でもきっと翌日にちひろはふっきれたりしない。それは単純に高いところから落とされたからではなく、本気の思いで、痛みを抱えた愛だから―――まあその辺りはアニメ2期7話の感想を参考にしてもらうとして、これはやっぱり見ていてキツいものがありますね。でも桂馬くんはサッカー部のキャプテンとは違い、去ったちひろを痛みとして胸のうちに抱えているわけです。だとすればきっと、以前とは何か変わってくるはず。そう信じるしかないなあ。頼むぜ落とし神。
今週の夜襲!
ん……んん!?
いやあ、天理はやっぱりかわいいですねぇ。はい。
かわいいですねぇ。じゃねーよ!天理だよ天理!あーもういつぶりだよいつぶりいつぶり!?確かに今までちょっとしたところで出番はあったけどさ、こんな大ゴマを分け与えられるのってすっげー久しぶりな気がする!大体ディアナなんだもん!そもそも天理が出てくる=ディアナが女神について何か喋る、だから、大事なこととその回の重要度はどうしたってそっちに行くわけ!そもそも設定話をする中で、天理がディアナ以上に活躍することはたぶん難しいと思う。思うけど、今回は設定話じゃないんだよ!やったー!ちゃんと鮎川天理という人間に対してスポットライトが当たっているというか、スクール水着天理のいたるところにスポットライトを当てて眺めたいというか。って、そうじゃない。
問題は天理がサンデー本誌でこんな大きく淫靡な肢体を晒したことじゃなくてね……いやそれも問題だけど。そもそも天理って露出度少ないんですよ。神のみってあんまりサービスシーンは多くない漫画ですが、それにしてもというか。天理の女の子としての部分はスルーされてきたというか。幼なじみという記号だったり、七香編のときみたく攻略の鍵でしかない。ヒロインじゃなかったわけです。それが今回はもうあれだよ!メインヒロインだよ、まるで!もうこのまま天理と桂馬くんの二人でGAN☆KONをやり始めても違和感ないくらいだよよ!いいなあいいなあ!天理との赤い糸で縛られちゃうんですね分かります。って、そうじゃない。
問題は天理がスクール水着を着たということじゃなくてね……しかしなんでスクール水着なんだろうなあ。ディアナは狙ってるだろうこれは……まあハクアさんを見習って全裸で入るというのもありだけど、物事には順序があるというか、やっぱり風呂に入って濡れるからには着衣のほうがいいというか。神のみは水着回がない以上、これまで本編ではみなみしか披露したことがなかったのですが。まさか次に天理が水着になるとはね!作中では秋なのに!現実世界では冬なのに!季節外れの水着ではありますが、でも、風呂場で水着っていいと思うんですよ。なんか。スクール水着を着る本来の用途であるプールとか海って、広いじゃないですか。遊ぶところなんですよ。学校のプールだったら真面目に泳ぐ、とかね。アクティブ。でも人ってお風呂場でアクティブにはならないじゃないですか!黙って浸かってるだけなんですよ。そういう状況にもかかわらずスクール水着っていうのはもうあれだよ!えげつない!えげつないよ若木民喜!スク水って体が圧迫されるから(多分)、水着と体の境界線で微妙な食い込みだったり身体への貼り付けが発生するわけです。余計なヒラヒラがついてるおしゃれな水着と違ってね。だからスク水っていうのはじろじろ見たいわけです。でも海とかプールだと見えない。泳いじゃうから。でもお風呂なら泳がない!距離的に近くで見ても何を言われる恐れもない!完璧じゃないか!もうこれから世界中の女の子は、お風呂に入るときにスクール水着を着用するべきだと思うんだ。って、そうじゃない。
だから一番の問題は、ディアナ……天理がスク水で英霊召喚される前の、ディアナの言い並べた言葉こそが最重要だと思うのです。スク水で流れがちだけど。ディアナは普通に「桂木さんを愛してしまった」と言っているけど、そんなんでいいのかなぁ。それはもっと、桂馬天理ディアナの本筋とは違った場所にある三角関係のキーワードだと思うんだけれども……そういうディアナの不器用さもかわいいところではあるんですが。ディアナも上記した歩美のように、「天理」を前提として、それを糧にして、なんとか罪から逃れようとしているようにも見えるのです。女神だから仕方ないのかもしれないけど。ディアナはそんな簡単に恋を諦めてしまっていいのだろうか。なんか何週もかけて、涙を流してやってる歩美ちひろがアホらしくなってくるじゃないか。やっぱり女神と人間は根源的な部分で「違う」のだろうか。想いの形と価値が。
そして「私の翼が出ないのは、私の罪悪感が天理の愛の力を奪っているから」……とディアナは言ったけれども。そういうものなのかしら。ツイッターでは何度か言っている気がしますが、奪うもなにも天理にちゃんと愛はあるのかって話なんですよ。それはまた来週以降吟味することになりそうな気はしますが、ディアナと天理だったら外見だけでは明らかにディアナの方が強そうですもん、愛。そういうところも含めて、来週、天理の内側がもう少しでもいいから明確に見えるようになってくれたらなあ、なんて思うのですが。
柱に「罪を背負った神を癒すのは……?」とも書いてありますが、いやーこれ見てほっとしましたよ。確かに桂馬くんとちひろ歩美の今の状況は、中心部にいる彼には把握しきれず理解しきれないことだと思うのです。それを調整するのが天理、と。やっと、やっと女神編で天理の存在意義ができるんだね!今までは本当に「ディアナを携えた体」ということでしかなかったですから。ただディアナがあそこまで言ってしまうと、なんか今まで伏せてきたものが全部サブキャラの時点で表立ってしまうような……ううん……。って、そうじゃない。
そうじゃないよ!問題はこれだよ!このコマだよ!

これ、桂馬くんが「水着!?」って言ってるせいでまるで天理も自分の水着を見てるように見えますが……これ、あれだよなぁ。おそらく桂馬くんのアレを見てるよなぁ。位置的に。いいなあ。個人的には水着姿の天理を見れることよりも、天理にアレを見せつけることができるほうが価値が高いと思うんだよ!だって、次元が違ったらできないもの!くそう桂木桂馬、そこを代われ!俺だって天理にアレを見せつけてうわなにをするやめ
(ごめんやりすぎた)