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神のみぞ知るセカイを人生の主軸、少年サンデーとアニメを人生の原動力としている人。
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1
「ふぅ…疲れた」
ある晴れた休日の昼下がり。
ハクアの姿は舞島市の近隣にある鳴沢市の上空にあった。なぜ彼女がそんなところにいるかと言うと別の駆け魂隊から応援を要請されたからで、現在はその帰りである。もちろん、空を飛んでいるハクアは姿を消すことも欠かしていない。そういったところでは彼女は余念がない。
雪枝の家へ戻ろうと飛んでいたハクアが何気なく地上の方を見た時にそこに見知った姿があった。
「え…?」
それは彼女にとって少々意外な人物だっただけに、思わずそんな言葉が彼女の口から漏れた。
それほど意外な人物であるならばもしかすると彼女の見間違いの可能性も…いや、それはほとんど有りえない話だろう。なぜならハクアが発見したのは――。
(鳥羽…瑠乃?)
そう、ハクアが目撃したのはあのゴスロリを身に纏った鳥羽瑠乃の姿だった。駅前の広場のような場所の木陰に立っている彼女の様子から考えると、誰かを待っているように見える。
(けど、どうしてあの服を…? 駆け魂はエルシィが確かに拘留したはずなのに…)
確かにあの駆け魂は拘留されたはずだ。となると、ハクアが感じているような疑問が浮かんでいるのもある意味当然と言えば当然であろう。
そして、そう思ったハクアは瑠乃に申し訳ないと思いつつも地上に下りてみることにするのだった。
2
「ちょっと早かったかな…」
その日、鳥羽瑠乃は鳴沢市の駅前の広場でとある人物と待ち合わせの約束をしていた。多分その相手とはまたしばらくの間会えなくなるだろう。そう思った彼女は今日の約束に何を着て行こうか迷った。迷いに迷って、結局このゴスロリの服を選んだのである。
待ち合わせの場所に着き、キョロキョロと辺りを見回す。けれども、どうやら約束した相手はまだ来ていないようだ。そして彼女が何気なく空を見上げてみると、太陽は眩しいくらいに輝いている。
(日差し、ちょっと強そう…)
そう思った瑠乃は駅の方から出てくるであろう待ち合わせの相手に見つけてもらいやすそうな木陰に入って待ち合わせの相手を待つことにしたのである。
「ふぅ…」
浅く短く息を吐いた。
今日の瑠乃には決意に伴う緊張があった。
この服を着ることを選択したのもその決意によるもので、これから伝えようとさっきから頭のなかでずっと考えていることもその一つだった。
そして、そんな緊張感は彼女に周囲をよく見えなくさせていたようである。
「あ、あの…」
「え、あ、は、はい……!」
だから、道行く人に声をかけられた彼女は多分ふつうの人が反応する以上に反応してしまった。そして、その人を見て彼女はもう一度心の中で驚くこととなった。
(お、男の人……!)
そう、瑠乃に道を聞いてきたのは青年だったのだ。しかし、見るからに人のよさそうな青年で瑠乃に何らかの悪意をもって話しかけてきたようには思えない。
「あの、鳴沢臨海ホールへの道を伺いたいんですが…」
「あ、は、はい。えっと、た、たしか…」
瑠乃はそこへの行き方を一応知っている。
知ってはいるのだが、苦手とする男性に話しかけられたせいで言葉が思うように出てこないのである。
(うぅ…。で、でも…)
けど、ちゃんと教えてあげないと。
だから、瑠乃は頑張って何とか続きの言葉を紡ぐ。
「えっと、あ、あっちだったとお……思います」
瑠乃は震える手で、方向を指さした。
「そうですか…! 丁寧にどうもありがとうございました」
青年は少し瑠乃の様子に心配そうな表情を一瞬見せたが、笑顔でそう言うと彼女が示した方へと歩いていった。
実際の時間にしては一分あるかないかくらいの時間だったけれども、今の会話だけで瑠乃はかなり疲労してしまっていた。
***
「やればできるじゃない…」
物陰からその様子を見ていたハクアは、そんな言葉を漏らしていた。
そして、今のやりとりを見て先程自らが抱いた疑問が勘違いであったことも同時に認めていた。
「駆け魂はやっぱり拘留されていたみたいね」
桂馬が攻略していた時は、彼以外の男性とほとんど話すことなかった彼女である。それが道を聞かれただけとはいえ、見知らぬ男性と会話できていた。
(桂木の攻略ってすごいのね…)
そんなことを心のどこかで思いつつも、再びハクアが瑠乃の方を見ると彼女は先ほどまでの表情から一転して嬉しそうな表情を浮かべていた。どうやら待ち合わせの相手が来たようである。
3
「はぁ、はぁ。ご、ごめんね…瑠乃。待った?」
「うぅん。今来たところだから大丈夫だよっ、音々」
そう、瑠乃が待ち合わせていたのは天才ヴァイオリニストとの誉れの高い、彼女の親友である鈴鹿音々だった。今日の彼女はコンサートの時のようなフォーマルな格好ではなく、カジュアルな格好である。
そして、走ってきた音々はようやく息が整って瑠乃の服装を見たのか一瞬驚いたような表情を見せた。それと同時に、驚きの言葉も彼女の口から漏れる。
「瑠乃、それ…」
「うん、ゴスロリ。着納めようと思って今日着てきたんだ…」
瑠乃はその音々の反応は予想済みだったのか以前のようには動揺せず、落ち着いた表情でそれに答えた。一方の音々は瑠乃の言葉がいまいちピンとこないのか首を傾げ、彼女の言葉を尋ねるように繰り返していた。
「着納め…?」
「そう、着納め。多分もう積極的に着ることはあまりないと思うから…。その最後を音々に見て欲しかったの。だから、今日着てきたんだ」
「瑠乃…」
音々は以前瑠乃と喧嘩した時に、瑠乃のゴスロリ趣味を否定するようなことを言った。もしかしたら、それを仲直りした今も瑠乃が気にしているのではないかと思って彼女の表情を見た。
すると、瑠乃はその意味を察したのか音々に優しい笑顔を見せながらこう言った。
「最初はファッションで着ていただけなのにね、いつの間にか私にとってこの服は現実から逃げるための一つの道具になっていたんだと思うんだ。だから、ちゃんとまたファッションの服として着てあげるようにするだけのことだよ…?」
「瑠乃…」
「そういえば、音々に感想聞いたことなかったよね。どう? 似合ってるかな…?」
瑠乃はそう言うとクルリとその場で一回転した。
そんな瑠乃の仕草に先程まで不安に満ちていた音々の心の中に温かさに似たものが広がった。それを彼女自身も強く感じる。
「似合ってる、似合ってるよ…瑠乃。だから、私に遠慮なんてしないで着たい時は着てきてね…」
「……うん、ありがとっ」
その音々の言葉に瑠乃は破顔した。その笑顔は何にも勝る輝きで、先程まで不安を抱いていた音々も思わず笑顔にさせるくらいに明るい笑顔だった。
そして、瑠乃は音々へと手を差し出す。
「さぁ、音々。今日は楽器店に行って、二人で遊べるゲームも買って、一緒に色んな甘いものを食べて、って予定がいっぱいなんだから…早く行こっ!」
「うんっ」
音々もそう言うと瑠乃の手を握って、彼女たちは二人揃って市街の方へと歩いていった。
***
「もう、彼女たちの心配は不要ね」
その様子を最後まで見届けたハクアはそう呟いた。
そして、それと同時にこれは自分の胸の中だけに留めておけばいいことであるなとも思った。だって、これは鳥羽瑠乃の、いや鳥羽瑠乃と鈴鹿音々の物語なのだから。
「さて、帰らないと」
そう思ってハクアは空を一度見上げた。
彼女が見上げた空は海のようにどこまでも広がっていて一面が輝くように青い。そして、所々に見える雲は白く軽そうで綿菓子のようかと錯覚してしまいそうなくらいだ。
そして、太陽も眩しいくらいにキラキラと輝いている。
そんな様子は絵画のような輝きを秘めていて、まさに今日のような日にはふさわしい空だった。
(了)
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