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神のみ・サンデーの感想ブログ。こっちはまじめ。
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神のみぞ知るセカイを人生の主軸、少年サンデーとアニメを人生の原動力としている人。
絵やSSもたまに書きますが、これは人生の潤滑油です。つまり、よくスベる。

ご意見・ご要望があれば studiotrefle0510☆gmail.com の方まで、☆を@に変換してお気軽にどうぞ。
鮎川天理さんからの求婚もお待ちしています。
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※神のみぞ知るセカイの二次創作のSSです。天理とディアナがメインとなったストーリーですが、多少原作との差異があり、その他のキャラにおいても個人のイメージで補われた性格設定が存在します。また、かなりつたない文章なので読みにくいかもしれません。それでもOKという人は、お気軽にどうぞ!(三話以外の話はこちら


 前に、一度だけ。
一度だけ、男の子に告白されたことがある。
小学校三年生のとき、同じクラスのとある男の子に校舎の裏で告白されて……その子は運動もできて、人の嫌がることを率先してやってくれる子だった。クラスの中のまるでヒーローのような存在で、その子にあこがれている女の子も多かった。
私は動揺した。
他の人なら、きっと「付き合い始めて、周りの女の子からうらまれたりしたらどうしよう」……みたいなことを思ったかもしれないけれど、そのときの私はそんなことは頭になくて―――どうやって断ろうかで精一杯だった。
その子は、手際の悪い私を少し前から積極的に手伝ってくれていた。一緒に下校したこともある。でも変なことを言ってくるわけではなくて、告白もとっても誠実で……もしかしたら。
もしかしたら私も、その子のことを好きかもしれなかった。
 
「ごめんなさい」
結局、私はその告白を断った。嫌いというわけではもちろんなくて、告白してきてくれたのもうれしかった。もしかしたら二度とこんな機会はないかもしれない……とも思っていた。
でも。
そういうことではないのだと思う。
頭で理解するなんてことは当時の私には無理で、きっと今の私でも無理だ。人気とか、頻度とか、これからとかそういうものを全部排除してしまってもかまわないもの。意見とか、評価とか、効率とかを全て取り除いたところ。そこに私の思いはある気がした。
会いたい。
たった一つのその思いが。
 
「鮎川さんには、好きな人がいるの?」
その子は最後にそう問いかけてきた。
好き。
そうなのかもしれないけれど……それは細分化したもののほんの一つで。
 
「わ……忘れられない人なら、いるよ」
それが答えだった。
 
記憶のつぶてを拾い集めよう。毎日毎日夢の中で、あの日の彼のことを思い出して……ひとつひとつと積み重ねていく。まだきっと届かないけれど―――
 
いつかはきっとたどり着けると信じてる。
彼の隣に。





 -------------------------------------------------------------------------


-長瀬 純(ながせ じゅん)-
16歳。舞島学園高校バスケットボール部部長に就任するまで、あと半年。


「ご、ごめん……大丈夫!?」
その人は本気で私を心配してくれているようで、倒れた私にすぐに駆け寄ってきてくれた。私がなんとか体を起こすと、すぐに私のおでこをさすり始める。
「傷は……よかった、できてない!」
私が無事なのを確認すると、その人はほっと胸をなでおろす。ジャージを着ていたのもあるかもしれないけれど、見かけですぐに高校生だということが分かる雰囲気だった。ジャージの背中を見ると、案の定「MAIKOH」と書かれている。
「大丈夫ですか、天理?」
ディアナも気に掛けてくれている。大丈夫だよ。
「でしたらそれを、この方々に伝えないと……」
そ……そうだよね。えっと、ありがとうございました?
「なんで感謝するんですか?」
だって、私の怪我を気にしてくれたし……。
「ま、まあそうですね。でもそれは二の次ですよ。まずは、『大丈夫』です」
「だ、大丈夫?」
私がディアナと頭の中で会話をしているうちに、女の人はまた私を心配してくれた。
「だ、大丈夫です」
その人は泣きそうな顔で私を抱きしめて、よかった!と安心している。心配かけちゃったかな……。

「ほら、先輩も謝ってくださいよ!」
すると、女の人は私に抱きついたまま後ろを振り返る。後ろには、私服姿の女性が転がったバスケットボールを拾っているのが見えた。短い黒髪を揺らして、その人はまるで風船を扱うかのようにバスケットボールを持ち上げた。
指の上でクルクルと回している。
「純はおせっかいすぎる」
その人は気だるそうにそう言って、私の方をちらりと見た。細くしまったその目に、私は少し萎縮してしまう。
「怖がってるじゃないですか、先輩」
「怖がらせたつもりはない」
「その発言が怖いですって!」
女の人は私から手を離して、今度は両肩に手をのせた。私をその先輩の方へ向けて、
「ちゃんと謝ってください、先輩!」
と言った。私は焦ることしかできなかったけれど、私の後ろで肩に手を添えていてくれるその人の瞳は、とてもまっすぐだった。

「……あいかわらずやっかいな後輩だ」
その先輩は恥ずかしそうに頬を爪先で掻いて、私をじっと見つめる。バスケットボールの回転を少しずつ弱めていって、その勢いがやがて止まる……と、その先輩はあきらめたような顔をして言った。
「申し訳ないと思わないこともない」
「謝りきれてないですよっ!」
私の後ろの女の人は、ため息をはいてがっくりと肩を落とした。
(面白い人ですね……)
うん、ディアナみたい。
(えっ)
「ご、ごめんね……先輩、いつもこんなだから。気にしないでね」
「こんなってなんだ。私は自分の思いに素直のまま生きてるだけだ」
「なんでそんな生き方してるんですかぁ」
 私はボールがぶつかったおでこをさする。確かに傷はついていないみたいで、ちょっと安心した。指先が前髪に触れて、短くなっていることを再確認してしまう。
ジャージを着た女の人は、私の前に立ってにっこりと笑った。
「ごめんねー。今日は図書館に用事?」
「は、はい……地図を探しに」
私が特に意味のないジェスチャーをつけながら話すと、その人は意外そうな顔をした。
「地図?どこかを探してるの?」
ど、どこか……。
この場合はなんて言えばいいのかな。
「彼氏の家とかどうでしょう」
友達の家かな……あ、でも、今は違うよね……。
「天理がスルースキルを身につけ始めましたよ」
だって、私と桂馬くんはぜんぜんそんな仲じゃないもん!……そうだよ、
友達ですら、ないよ。


桂馬くんの中に、きっと私はいない。五年も会っていないし、その五年前のときですら、彼の心の中にいれたかどうかは分からない。
そうだ。
私が桂馬くんと会ったとして、果たして時計の針が五年ぶりに動き出すのか……私の胸の中に、不安というものが再びこみ上げてくる。驕ってない?


「天理……」
私がまたナーバスになっていると、突然両の頬をつままれた。むにーっと顔を伸ばされ、うつむいていた顔を上げさせられた。
「辛気臭い顔してるな」
「せ、先輩っ!?なにしてるんですか」
私がそのまま上を見上げると、そこにはあの無愛想な先輩さんがいた。その先輩に私の頬をもう一回引っ張られて、つい声がもれる。
「はひ?」
「私が投げて、未熟者の純が取りこぼしたボールにお前が当たりに来てしまったとはいえ、私も部外者じゃないからな。そんな顔されてると、気分が悪い」
「先輩の投げたボールがぶつかったんですよ!曲解しないでください」
「柔軟な発想と言え」
私はすぐに察した。ぶっきらぼうではあるけれど、この先輩さんも私を気にかけてくれている……確かに私の不注意が原因だし、何より関係のないことで落ち込んでしまっていた。
「ほ、ほへんははい。はいひょーふへふ」
私がそう言うと先輩さんはつまんでいた両手を離して、それでいい、という顔でにやりと微笑む。私はあわせて苦笑いした。

「ねえねえ、場所探してるなら私たちが案内しようか?この辺りはよく知ってるから」
後輩さんはにっこりと笑いかけてくれる。
「で、どこに行くんだ?結局」
「えーと、五年ぶりに……同級生の家に、あ、遊びに」
私はちょっと迷ったけれど、とりあえず分かりやすく説明することにした。ありのまま、というか。ディアナは頭の中で「未来の我が家に」と言っていたけれど、私は静かに流すことにした。
「その同級生って、女の子?」
後輩さんは、何の気なしに私にそのことを聞いてきた。私は心の中を見透かされたような気がして、一瞬とまどう。男の子の家に遊びに行く……そんなことは、今までの人生の中で一度もしたことがなかった。
「…………」
私が何も言えずにいると、先輩さんがそれを見て、さっきと同じように微笑んだ。その笑顔は後輩さんとはまた別の純粋さを持っていて、弱ったエサを見つけた捕食者のような雰囲気があった……と思う。
「ははーん、男か」
そして、私の心の中をすっぽりと見透かした。
確かに分かりやすい反応だったとは思う。
「お、男の子!?見かけによらないっていうのは本当ですね……だいたーん」
一方、後輩さんはそれを聞いて、さっきまでよりも瞳を輝かせる。
(完璧に見透かされていますね、天理)
……ちょっと意味合いが違うような気はするけどね。
 「すごいなー、五年越しの再会かぁ……ロマンチックだなぁー」
ロマンチック……私はその言葉に意外性を感じた。もちろん私はそんなロマンを狙ったわけではなくて、単純に会いに行く勇気が出なかったというだけの理由なんだけれど……
ロマンチック。
そうかもしれない。
「がんばってね!その男の子を落としに行くんでしょ!?」
えっ。
「五年ぶりってことは、『幼なじみ』だもん……絶対うまくいくよ!」
「お、幼なじみ……?」
「純はテレビや漫画の見すぎだ」
先輩さんは、両手の指を交差させて幸せそうな想像をしている後輩さんに近づいて、おでこを軽くはたいた後にまたボールを指先で回し始める。

幼なじみ……そう言われてみればそうなのかもしれない。例えばこの世界の中で、五年前からずっと桂馬くんのことを知っていて、思っていた人。そんな人はもしかしたら私しかいないかもしれない。桂馬くんは五年前にあの性格で、他の人たちから浮いてしまっていたから……そういうことだってありえてもおかしくはない。

自覚した。
私は、桂馬くんの「幼なじみ」なんだ。

(幼なじみ、ですか……それってすごいんですか?天理)
え?えっと、その……。
「ふん、幼なじみだからどうした?長い間があればいいってもんじゃないだろ」
ディアナの代わりとなったかのようなタイミングで、先輩さんはそう質問した。問いかけた後、指先で操っていたボールを後輩さんにそのまま投げる。
「何言ってるんですか先輩。長い間好きでいてくれた、とかの方が嬉しいのはあたりまえですよ!」
後輩さんはそのボールの軌道を変えることなく、沿うようにして滑らかに触って……速度・角度を変えることなく、まるでボールの周りの重力が反転したかのようにまた投げ返した。
「偏屈理論だな。そんなこと言ってたら、幼稚園児のころから95年間サッカー続けているじいさんが日本代表だ」
それを先輩さんはまた指で受け取り、一回上に放り投げてからまた人差し指でクルクルクルーっと回転させる。しかも、さっきとは逆の方向で。
「体力には上限があります!でも愛情にはないですよ!」
後輩さんはそれに近づき、回転の勢いを消さないまま先輩さんからボールを奪い取った。
「上限云々の前に、量れないだろそんなもの。五年ぶりに食べる寿司と、今日食べた後明日食べる寿司とで味は変わらない」
「毎回テストで百点取ってる人が取った百点より、いつも点数が低い人が取る百点の方が貴重ですし、取った本人もより喜びます!」
「それは貧しい国の人間がチョコレート食べて過剰に喜ぶのと同じだ。結局変わらない、中身は同じ。まやかしだよ、まやかし」
「質量は変わらなくても容積は変わりますー!思いってそういうものですよ!」

「あ、あのー……」
二人の言い争いを、とりあえず私は間へ入って止めた。後輩さんは怒って頬を膨らまして、先輩さんはそれを見て眉をひそめている。ケンカしている……というわけではないとは思うけれど、二人の間にはバチバチと火花が散っているのが見えた気がした。
(仲がいいほどケンカするということですか)
ディアナはちょっと呆れている感じだった。もしかしたらディアナも、昔家族の中で似たような会話を見ていたことがあったのかもしれない。天界でもそういうことがあってもおかしくはないよね……というより、ディアナはこういうケンカをしていた方だとは思うんだけど……。
(何言ってるんですか、私は神ですよ。失礼なことをされても、絶対に怒ったりはしません)
…………。
とにかく。
「えっと……私は大丈夫ですから……案内も、なくて平気です。ごめんなさい……」
(また謝った)
後輩さんは頬を縮めてこちらを向く。
「そ、そう?ごめんね、迷惑かけちゃって……。先輩には私から注意しておくから~」
「私は悪くない。重力が斜め方向にかかっていればこうはならなかった」
「……はぁ」
後輩さんはその発言を流して、ボールを軽く地面でバウンドさせる。
「ともあれ!がんばってね、告白!」
「こ、こくはくっ!?」
突拍子のないことを言われて、私はまた顔が赤くなる。しません、そんなことしませんから……っ!
「わー、先輩と違って素直でかわいいー♪」
「私が素直じゃないと」
「先輩は『率直』なんです」
「何が違う……まあいい、行くぞ純、そろそろ市民体育館のスペースが開く」
そう言って、先輩さんは足早にそこから去っていった。私はさようなら……じゃなくてありがとう……いやごめんなさい……のどれを言おうか迷っているうちに、挨拶をするタイミングを逃してしまっていた。
後輩さんはそれを見てあわててボールを両手で抱えて、私のほうを振り向く。
「ごめんね、ぶつけちゃって。私、舞島学園高校の二年生……になるから、何かあったら遠慮なく連絡して?」
「は、はい!えっと、ありがとうございます」
「うん、じゃあね!…………待ってください、先輩ー!」
最後に後輩さんは大きく笑いかけて、先輩さんの後を走って追いはじめた。二人の後姿はとても大きくて、頼りがいがあって―――まるで学校の先生のようだった。


「確かに、あの後輩の方は先生に向いてそうですね。面倒見も良かったですし」
……でも、先輩の人も向いてると思うよ。しっかりと自分の意見が言えて、どんなことがあっても揺るがないというか……不良みたいな生徒さんがいても、怖がらずに相手が出来そうな気がする。
「なるほど」
私とディアナは二人と別れて、もう一度桂馬くんの家へと向かい始めている。途中の踏切で遮断機が降りて、その後に目の前を電車が凄い勢いで通り過ぎる。眼前を通り過ぎる電車の窓に反射して、ディアナは言った。
「まあ、素行の悪い生徒は苦労するでしょうね」



-------------------------------------------------------------------------



-青山 美生(あおやま みお)-
11歳。現・青山中央産業令嬢。


今、私たちが向かっている「桂木家」は、私の記憶の中にあるものとは違っているものだ。

五年前の地震で全壊してしまった桂馬くんの家の代わりに、桂馬くんのおじいちゃんの家を建て直したところ……今はそこに住んでいる、らしい。私の家も損傷を受けていて、桂馬くんが引っ越したすぐ後に同じように引っ越した。……その際、一度だけその「桂馬くんのおじいちゃんの家を建て直した家」に行ったことがある。
桂馬くんはいなかった。
でも、あのときのことも結構覚えている。特に家の形は特徴的で、そのおじいちゃんのやっている陶芸教室と家が併合された形になっていて……今でもぼんやりと思い出せた。さっきのバスケットボールの人が通っていた「舞島学園」からそれほど遠くない場所にあるということも地図から把握できている。桂馬くんの家はまだ全然見えないけれど、その舞島学園は今歩いているところからでも認識できた。

「桂木桂馬は、あの学校に進学するんでしょうか」
猫よけの水入りペットボトルに反射したディアナも、遠くの舞島学園を黙認して言う。
多分、そうだよ。
この辺りはあんまり学校の数がない。五年前の地震で、古くからあった学校はほとんどが大きな被害を受けてしまっていた。だから、舞島周辺の全ての中学校・高校を集結させた学園として「舞島学園」が設立された。多分舞島やその辺りに住んでる人は、ほとんどが舞島学園に通うと思う。
大きな高校と言われれば、舞島学園の高等部と木梢高校、そして私の家の近くにある美里東と、少し遠くにある美里南……くらいかなぁ。鳴沢市を含めればもっといっぱいあるんだけれど。
そういえば最近、鳴沢市に商業系の高校が新たに作られたらしいね。
「商業系?」
お店の経営とかの方法を習う学校だよ。お花屋さんとか、本屋さんとか。
「ラーメン屋さんとかですね」
……たぶん、桂馬くんも舞島学園に進学すると思うよ。あ、でもそうなると中学受験があったのかな……。
「受験?この時期に行ったら迷惑ですか?」
ううん、もう合格結果はとっくに出てるはずだから、そういうことはないと思うけど。……それに、桂馬くんならきっと合格してるよ。あんなに頭いいんだから。
「行動は傍若無人でしたよね、天理の記憶だと。入学試験のときもゲームをしていそうです」
ゲームしてたと思うなぁ……桂馬くん。
「…………」
ディアナは通りすがった人の腕時計の表面に反射してため息をついた。




『KATSURAGI』
…………。
「…………」
…………。
「着きましたね」
大きな一軒家の玄関と思しき場所には、木のプレートが貼られてそう彫られていた。

本当だ。
本当に桂馬くんの家、なんだ。

……帰ろっか。

「到着して数秒で怖気づかないでください!緊張するのも分かりますが、ここまで来たのにそんな態度でどうするんですか。インターホン、押してください。さあ」
…………。

怖かった。
これを押した瞬間から「桂木桂馬」という人生と、私の人生とが一瞬でも交わる。交差する。「会っていなかったから」という言い訳は通用しなくて、一つの運命という世界の中にどちらとも放り込まれる。逃げたりはできない。引き返したりもできない。これを押した瞬間から―――
…………。
抱いてきた夢想が実現する。
抱いてきた幻想が壊される。
これは表と裏にあって、どちらのコインの面が出るかは分からない。そして現れた現実に対して、分からないという言い訳は何の意味も持たない。どこか遠くから眺めてきた「桂木桂馬」という人間の世界の流れに巻き込まれ、そして流される。部外者ではなく当事者になる。過去の思い出ではなく今の出来事となる。
それは望んでいたことで。
私はずっと五年前のことを思い出しながら、夢の中にいたのかもしれない。そこを現実の捌け口にしていたかもしれない。その捌け口が現実となったとき、私はどうすればいいのか。


私は。
何を望んでいるのか。


がんばってね、告白!というあの人の言葉が頭に浮かぶ。告白をするの?しないの?
しない。
なら、何をしに来たの?
動物園ではないんですから、というディアナの言葉が頭に浮かぶ。見るだけ?遠くから。
なら、何が変わるの?

私の願いとはなにか。
そうか―――なんでこんなにも、桂馬くんと会うことが私にとっての不安なのかが、やっと分かった。怖いのだ。
告白することでも、それにフラれることでもなく。
何も変わらないことが―――怖いのだ。


「天理」
またうつむいていた私に、今度はディアナが声をかけた。
「私は驚いています」
私の指は伸びたまま、インターホンの寸前で止まっている。動く気配はない。
「天理はいつも、求めないでいました。遊び道具が足りないとき、天理はいつも他の人にそれを譲っていた。給食でプリンがあまったとき、決してそれをもらいに行こうとは思わなかった。お金が落ちていればちゃんとお母様に相談しますし、欲しいものがあってもそれをねだったりはしませんでした。それはきっと天理の長所で、短所です」
指先が震えている。手を下ろそうとするけれど、どうしても下りなかった。
「けれど、今回は天理自身が望んでいます。桂木桂馬と会うということを。私はもちろん後押ししますが、正直理解はできませんでした。私はきっとこの先何百年生きても、天理は自分から会いには行かないと思っていたからです」
でも、望んだ。
「なぜですか?今日この日に、天理が私の申し出を了承した理由―――天理が変わろうとした理由」
理由。
「そして、天理が『望んだ』理由は」


…………。
私は。
私は嘘をついていた。
ディアナの言うとおり―――今日、私がディアナの「冗談」を鵜呑みにしたのは理由があった。と、思う。でも私にはそれは分からなくて、必死で他の理由を探した。「中学校に入学してしまうから」「ディアナが何度も勧めるから」……そんなものは理由にならないということはきっと、ディアナにはとっくにバレていたに違いない。
「何も変わらないこと」。
五年ぶりに桂馬くんと出会い、何も変わらないのが怖いのではない。「何も変わらなかったとしても、変わらない自分」が怖いのだ。私はきっとその現実を受け入れて、そしてまたこれまでと同じ日々に戻る。
それは……
それは……言えないのではないか。




「桂木桂馬」が大切な人だと、言えないのではないか。





彼の中で私の存在が希薄で、意味がないということが分かっても……何も変わらず、泣いたりもせずに生きていく。それで自分にとっての大切な人だと言えるのか。

五年間ずっと、私は桂馬くんを思ってきた。もしそれが「まやかし」だとしたら。
私はどうすればいいの?


「だからこそ」
ディアナの声が聞こえる。私の腕は下がっていた。
「だからこそ、桂木桂馬と会うんです。変わることを恐れることは誰だってあります……でも、その上で変わらないことを恐れてしまったら、八方塞がりです。どうしようもありません」
ディアナは私の瞳に反射して、喋る。
「桂木桂馬の中から天理の存在が消えていて、それでも天理が何も感じなければ―――それ以降の桂木桂馬への思いは片思いでも、幼なじみのせつない思いでもありません。ただの、過去への執着です」

そうだ―――
私はハッキリとさせるためにここまで来た。
桂馬くんへの思いを確かめる。そのために。

「私がいます」
私が静かに目を閉じると、ディアナの声が再び脳に直接響く。胸に手をあてて、ディアナの存在を確認して、

「もしそうなったら、一緒に、新しい恋を探しましょう」
インターホンに、手を伸ばす。



「―――あれ?」
……えっ。
私がインターホンを押そうとしたその瞬間、ちょうど家の中から一人の男の人が出てきた。私はドキッとして、その人を見つめる。
「……君は?」
男の人は立ち尽くしていた私に気づくと、、ものめずらしそうな表情で私を見ながら、問いかけてくる。
私はその人を見たことがあった。
その人は。
(こ、この人は……桂木桂馬)
……の、パパさんだね。


「桂馬はいないよ」
と、桂馬くんのパパさんは私に教えてくれた。桂馬くんのパパさんも今さっき外国の仕事から一旦帰ってきたところで、おみやげを置いたらすぐに帰らないといけないらしい。桂馬くんのパパさんが電話で聞いたところによると、今はママさんと一緒に鳴沢市でお買い物をしているみたいで……帰りがいつになるかも分からない。
私とディアナはそのことを知って、パパさんに挨拶をしてから再び新舞島駅へと戻ってきていた。


駅の構内のベンチに座って、私は再び肩を落としている。
「鳴沢市へ外出しているとは……私も、そこまで考えが行き届きませんでした」
そのベンチは、小さな噴水の周りに円形にベンチが縁取るように作られていて……その噴水の水面に反射しながら、ディアナも同じく肩を落とした。
桂馬くんは桂馬くんの家にいる、という固定概念が生まれていたかもしれなかったと私は反省する。
もちろん、そういうことも一応想定して、お金は持ってきていた。持ってきていた……けど。
「なるほど、あの時に」
ちょうど数時間前にここに来たとき、私はお財布の中にしまっていた切符を落としてしまった。お財布に穴が開いていて、見事に貫通してしまっていたのだ。そしてそのとき、ママからもらった千円札もどこかに落としてしまった。あれがあれば、鳴沢市へ行って戻ることもできたんだけれど……。
幸い、私のお財布の中には「小銭」として、美里へ帰るぶんの料金は残っていた。けれど、鳴沢市へ行って、それから折り返して美里に戻るとなると……どう考えても足りない。
一度帰って、また別の日にリベンジする。
そういう発想ももちろん頭の中に浮かんでいた。浮かんでいた……けれど。

「天理」
とめどなく揺れ動く水面に映ったディアナは、優しいトーンで私に話しかける。
「私はできれば、今日このまま天理に……桂木桂馬のところまで行ってほしいと思っています。天理が発起することがあまりないというのもありますが、今日は……天理が自分で選んだ日なんです。今日の天理は今までの中で、一番いい顔をしていると思いますし、桂木桂馬にも、そういう天理を見てほしいと感じました」
…………。
「無責任と言われても構わないです、どうにかして今日このまま行けませんか!?他に何か方法はないんですか!?」
……もちろん。
もちろん私だって、今日中に桂馬くんに会いたい。会って、私の思いを確かめたい。私の本心に気づいた今、桂馬くんと会うことは明確な「こわいこと」だけれど、それでも―――乗り越えたいことだから。大切にしていきたいことだから。
こんなところで、手を伸ばすのをやめたくない。
でも……。
「……ごめんなさい、天理。無茶を言ってしまって」
…………。


私は悔しかった。
こんな些細なことで阻まれてしまうことも。
今日、私を助けてくれた何人もの人たちの期待にこたえられないということも。
そして今、諦めかけているということも。

自信が消えていく。白い布に墨汁が染みていくかのように、ゆっくりと、ゆっくりと喪失感が広がっていって――――
目を閉じようとした、そのとき。


「ちょっと、そこの庶民」


声が聞こえた。
私の、隣から。
「なんだか知らないけど、私の隣で泣かないでくれる?」

―――えっ。
私は顔をあげて、目をこする。無意識のうちに涙を流していたことに気づいて、恥ずかしさに顔が赤くなる。
残っていた涙をすべてふき取り、これで……と思うけれど、不思議なことにそれでもまだ涙が流れてきた。え、え、とパニックになる。
涙が止まらなかった。
「ちょ、ちょっと!私が泣かしたみたいじゃない!」
私は隣の人に心配をかけていたことは分かっていたけれど、それでも内心は実は、ほっとしていた。
いま私の心の中では、拒否しているんだ。
ここで諦めることを。桂馬くんに会わないことを。私はまだ行ける―――怖くても、どこへだって行ける「意思」がある。


「うっ……うっ……」
「だーもう!泣き止みなさいってば!」
「ご、……ごめ、ごめんね……」
私は奇怪にも、泣きながらわずかに微笑んでいた。常識や理屈で閉じ込めていた私の思いの一部が、こうしてこぼれ出てきてくれたからだ。
「……ぐすっ、ぐす」
私がそれでも泣き止めずにいると、泣き顔を見られるのが恥ずかしくてうつむいてた私の目の前に、一つのハンカチが差し出された。「使って」と言われたので、私は遠慮しようとしたけれど……やっぱり使わせてもらうことにした。びっくりするくらいふわふわのハンカチで涙を拭くと、やっと落ち着いてきた。
私は目をパチパチさせながら、顔をあげる。私の目の前には、ハンカチを差し出してくれた女の子が立っていた。
見るからに「お嬢様」という女の子だ。

「あ……ありがとうございます」
「まったく、庶民にそんなことするなんて」
私が感謝の意を伝えると、私の目の前の女の子……の隣の女の子が、腕を組んで私に背を向けながらそう言った。
「本当にお人よしなんだから、結は」


私はもう一度目を瞬かせ、借りたハンカチをぎゅっと握り締める。
(その顔です、天理)
私は決意した。
もう、前に進むしかないと。



-----最終話につづく-----

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◆ 無題
読ませていただきました。
原作キャラの性格を尊重した作りで、違和感なく読み進められて良かったです。
後の教師二人と最後に美生と結のお嬢様コンビが登場しましたね。あと桂一さんも!
最近は男装してパワーアップした結の印象が強くて元々のお嬢様結がどんな感じだったか忘れ気味なので、最終話でビフォワー結分が補充で来たらいいなぁと思います。
天理ちゃん桂馬に会えるかな?
次回も期待してます。
viper 2011/01/17(Mon)15:05:01 編集
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