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神のみ・サンデーの感想ブログ。こっちはまじめ。
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神のみぞ知るセカイを人生の主軸、少年サンデーとアニメを人生の原動力としている人。
絵やSSもたまに書きますが、これは人生の潤滑油です。つまり、よくスベる。

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※神のみぞ知るセカイの二次創作のSSです。天理とディアナがメインとなったストーリーですが、多少原作との差異があり、その他のキャラにおいても個人のイメージで補われた性格設定が存在します。また、かなりつたない文章なので読みにくいかもしれません。それでもOKという人は、お気軽にどうぞ!(第二話以外の話はこちら


私は、どうしてあの人に会いたいのだろう。
ふと、そんな疑問が頭に浮かんだ。会って、私は桂馬くんと何がしたいのだろう。何を求めているんだろう。
楽しく昔について話すの?私の思いを伝えるの?どれもしっくりとこない。五年前のあの日の桂馬くんの横顔を、私は思い出して――少し、寂しい気持ちになった。
あの時、私はずっと桂馬くんを見ていたけど、桂馬くんは私を見てはいなかった。隣の私ではなく、遥か彼方の出口を見つめていた。私は期待しているのかもしれない。今日彼に会いに行くことによって、彼が、私の方へ振り向いてくれることを。
「天理」
桂馬くんに名前を呼ばれる……それはさすがに欲張りすぎだけど、いつかのそんな日を夢見て。私は今日も、彼の背中を追い続ける。




 
-------------------------------------------------------------------------


-汐宮 栞(しおみや しおり)-
12歳。未だ、紙の砦の中。


「何を悠長なことを言ってるんですか」
……そんなことを思っていたら、ディアナに叱責をもらってしまった。
「今回の遠出の目的は桂木桂馬を見に行くわけではなく、桂木桂馬とコミュニケーションをとり、”落とす”ということだというのをお忘れですか?天理。こっちを振り向くだけでいいって、まるで動物園に行くみたいじゃないですか」
動物園。わ、なんかちょっとしっくりくるかも……。
「呆れたものですね……。柵というか、間の隔たりをなくしてください!そんなことで桂木桂馬と円滑な会話ができますか!?」
け、桂馬くんと喋るのは……さすがに、無理だよ。それこそ、学校の友達や駅員さんとは違うし……。
確かに昔は、それほど躊躇もせずに会話が出来ていたけれど。
五年前の私は、そこだけはすごいと思う。
「もう、そんなことでどうするんですか!なら練習してみましょう……私を桂木桂馬だと思って、まずは話しかけてみてください」
ディアナが桂馬くん?
私は五年前の記憶から、桂馬くんに対するありったけの記憶を探し出す。頭の中でイメージを作って、それに向かうようにして話しかけた。
「こ……こんにちは」

「なんだい、天理。今日もかわいいね」

…………。
私のイメージが砂山のように崩れ落ちる。

「何ですか天理、その挨拶は!堅苦しすぎます」
ディアナの挨拶は軟派すぎるよ!
私はあわてて、崩れたイメージの砂を取り集める。ディアナのイメージは……逆に、砂の中の奥に埋めておこう。
「仕方ないじゃないですか、よくよく考えてみれば、私が始めて天理と出会ったとき、すでに桂木桂馬は気絶していたんですよ。天理と共有している記憶でしか、動いている桂木桂馬は見たことありませんし」
ディアナこそ、桂馬くんを珍しい動物みたいに言うね。
「事実ですから」
ディアナはいじけたように言う。
とにかく、そういうことは会ってから考えようよ。桂馬くんだって五年前のままではないんだし……変わってる可能性だってあるよ。
今の私とは違って。
「どうするんです、変わってしまっていたら」
変わって「しまう」なんて言い方はおかしいよ。
「どうだか」

桂馬くんはいつだって変わり続けていると思う。私みたいに立ち止まって、少し歩いて、また後ろを振り返って……みたいな生き方は、きっとしてないよ。
「だったらなおさら、話しかけて呼び止める必要があります。それだけは、予習しておきましょう」
…………。
「け、桂馬……くん」

「なんだい天理?ああ、まい・すいーと・はにー!」

…………。
「だーかーらー、駅へ折り返さないでください、天理!冗談ですから!」



そうこうしているうちに、私とディアナは舞島図書館に着いた。
この図書館も、どうやら最近新たに建て替えられたもの……らしい。外観はとてもキレイで、ピカピカで、すごく大きい。五年前の地震でたくさんの物が壊れた結果、町全体がより発展する……というのはちょっと皮肉に感じる。
「入ってみましょう」
ディアナにうながされて、私は図書館の自動ドアを通って中に入った。外とは違い、車の音、人の話し声といった周囲の音が一瞬で遠のく。自動ドアが閉まると、完全に別の世界に来たようだった。
予想以上に中は広くて、本の冊数もすごい。前も、横も、上も、全てが本で構築され、建物と言うよりは、一つの砦のように感じる。
「この町周辺の地図はどこでしょう。案内板みたいのはありますか?」
私がそれを探して少し歩くと、一番大きなホールに出た。視界いっぱいに机と椅子が並び、その奥にはより多くの本がある。小さい窓から差し込む光は、その無機質な並びをより際立たせていた。
あ……あった、案内板。
上に掲げてあるそれには、本の種類とその置き場所が羅列されていた。小説、伝記、論文、雑誌……などなど。そしてその全ての本が、より細かいジャンルに分かれている。
「地図、地図……あ、ありましたよ」
その案内の並びの中でも後ろの方に項目があるのを、ディアナが発見する。私もそこに目を向けると、
「地図 N74」
と書かれていた。N74という箇所にまとめて置いてある、ということだと思う。
「なるほど。で、N74というスペースはどこですか?」
……さあ。

ディアナはポカンという顔をした、と思う。
「なんですか、それは!記号だけじゃ分かりませんよ!地図はないんですか!?」
地図ならあるよ、N74に……。
「そういうことではありません、地図が置いてある場所を示す地図はどこですか、という意味です!」
私は辺りを見渡して、広いフロアを歩き回ってみるけれど、そういったものは見あたらなかった。確かに本棚の端にはスペースをあらわすその記号が貼ってあるけれど、どちら側がAで1なのか分からない以上、動きたくても動けない。
ディアナはさらに、「あ!」という声をあげた。
「見てください、天理」
ディアナが指し示した先には、貸し出し用カウンターがあった。私はそこに駆け寄るけれど、そこには……人が一人もいなかった。代わりに大きく貼り紙がしてあるのが目に入る。

『蔵書導入直後につき、未だ貸出機能が管理されておりません。館内のみでのご利用をお願いします』

……つまり、まだ本は借りられないってこと?
「みたいですね。だからここには誰もいないんでしょう。スペースが知りたければ……やはり、館内を歩いて他の誰かに聞いたほうが効率的です」
ま、また聞くの?それにこれこそ駅員さんとは違うし……ただ本を読みに来てる人に聞いても、案内してくれるかな……。
私はちょっと弱気になる。ピカピカの床にディアナは反射して、うーん、と、考えるポーズをとった。
「まあ、誰もがみなあの女性のような人ではないですし……なら今度は、なるべく天理と歳が近い女性に聞いてみましょうか」
そうしましょう!と早々と決め付けたディアナに促されるまま、私は館内を捜索しだした。




私もたまに本を読むけれど、そこまで厚くない文庫本ばかりで、ハードカバーがせわしなく置いてあるこの図書館の中にいると少し圧迫感を覚える。でも、私はそれが嫌いではなかった。暗いコントラストと、周囲の圧迫感、そして不気味なまでの静けさ。潜在的に、五年前のことを思い出す。
ディアナがいるせいかどうかは分からないけど、私はあの日のことをとても鮮明に覚えている。会話も、行動も、空気のにおいや音の響きも。そして何より、つないだ手の感触を。
五年間も会っていない人のことをいつまでも想っているのはきっと珍しいことで、難しいことだと思う。でも私はあれから何日が過ぎても、どれだけのことがあっても、桂馬くんのことが忘れられない。私の中心は全てあの日にあって、桂馬くんにあって、私を守る砦となっている。
それが壊れるのは怖い。
でも私は今、その砦の外へ向かっている。大きな壁を越えることは難しいことだと思うけど、私はそれでも扉へ向かう。




「いましたよ」
館内を歩いていると、ディアナが先に人を見つけた。私は少しドキッとして、ゆっくりとディアナが示したほうを向く。
図書館の端の読書ルームを見ると、確かにそこには人がいた。しかも、私と歳が近いであろう女の子だ。
光が入らず、少し暗くなっているその場所で、女の子は黙々と本を読んでいた。ちょっと近づきがたい雰囲気が周りに漂っていて、私はわずかに躊躇してしまう。
そんな私を見て、ディアナが助言をくれた。
「せっかく駅で、あの人から勇気をもらったんです。がんばってください、天理!」
その子はすごく集中しているようで、完全に自分の世界に入っていた。くりくりっとした目は本の中だけを向いていて、正直……話しかけづらい。
でも。
私は息を吐いて、意を決した。話しかけづらいと思っていても、逃げたりはしたくない。ゆっくりと、その子の前へと歩き出す。


「あ、あの!」
私の声が聞こえたのだろう、その子はちらりとこちらに視線を向けた。自分に話しかけていると認識して、本を閉じ、私を見つめる。
私は一歩後ずさりそうになるけれど、それをどうにかして止めて、もう一歩その子に近づく。
あの女の人と話した後だと、なんだかその子の背が小さく見える。ちょっと他の人よりは小さめかもしれない。
ある程度の距離まで近づいた後、私はなるべく声を大きくして聞いた。
「え、えっと……聞きたいことがあるんです、けど……!」
い、言った!
私はドキドキして相手の反応をうかがう。その人は小さく目を細め、考えているようだった。
改めて見ると、その目はまるでライトのようにキラキラとしていた。その目でじっと私を見る。私はどうにも気まずくなって、視線をどこか別の場所へ……えーと、えーと……そうだ、本。その子の読んでいた本へ向ける。
その本はそれほど厚くなくて、さっき閉じたおかげでタイトルが見える。
「ヨーロッパの月」
それが、タイトルだった。

「ごめんなさい、私は忙しいのですね」

え。
私はもう一度その子を見た。目は丸くて、眉は細くて締まっている。髪は長いクリーム色で、ふわふわで、
なんというか。
人形のような人だった。


-------------------------------------------------------------------------



-九条 月夜(くじょう つきよ)-
12歳。既に、月の住人。


…………。
……こ、断られちゃった。
その子はまた、静かに読書を始めた。読書と言っても、読んでいる本は物語ではなくて「写真集」だった。満月、三日月、青い月、赤い月……色々な月がその本には載っていた。
月が好き、なのかな。
「問題はそこではないでしょう、天理。……もう一回お願いしてみては?」
心の中で、ディアナは私に話しかける。
もう一回 と言われても、断られちゃったのにまた聞くのはダメだよ……。別の人に聞こう?
「ですが、何の質問かどうかすら聞いてないではないですか。とりあえずそこまで言って、それでもダメなら諦めましょう」
え、えー、でも……。
「これだけ静かなんです、ほかに人がいる可能性は低いですよ」
一人くらいならいるよ?多分。これだけ広いんだし、ずっと中を探してれば……。
「それができるなら、最初から本を探しますよ!ここは手っ取り早い情報収集が先です、もう一回だけでも」
でもそれなら、周りを少し探してからの方がいいんじゃない?迷惑かけるのはやっぱりだめだよ~!
「一回ここから離れたらもう無理ですよ!今のうちです!」


「…………」
心の中で葛藤する私を、その子はジトーッとした目線で見つめる。私はそれに気づいて、やっぱりここから去ろう、と決めた。もともとすごく集中していたのを私が邪魔してしまったのだから、早く謝ろう、早く!そう思って私が頭を下げようとすると、それより先にその子は言葉を発した。
「分かりました……あまりにも邪険だったことは認めるのですね。用件くらいは聞きましょう」
その子はすっと椅子から立ち上がって、本を置いて、自分の隣に座らせていた人形を持ち上げた。それはまるでその子を小さくしたような人形で、まるで意識があるかのように私を見つめてくる。
いつも私が買ってもらっているようなぬいぐるみではなくて、すごく高そうなリアルな人形だった。ドール、というのだろうか。
「天理、用件ですって、用件」
っえ!?あ、そっか……用件、は……。
私は人形に視線を合わせながら話す。
「えっと、地図が置いてある場所って……分かりますか?N74っていうスペースにあるみたいなんです、けど」
「……地図?」
(どこ見てるんですか、天理。目線をあげてください)
私がゆっくりと視線を向けると、その子は顎に手を当てて考える仕草をしていた……けど、すぐに手を離した。
「ごめんなさい、私はそんなにここには詳しくないから……。今日だって、プラネタリウムが開館するまでの待ち時間に本を読んでいるにすぎないですし、」
その子は、机の上に置いた本を私に見せた。
「これも図書館の本ではない……だから、私では力になれないのですね」
「そ、そうですか……」
私は肩を落とした。確かに、いくら私のような他の町から来た人ではないにしても、そこまでこの図書館での読書に従事している人がいるだろうか。再び周りを見回し、本の多さにちょっとぞっとした。これだけあるのに把握するなんて、それこそきちんとした司書さんでないと無理ではないだろうか。
探さないと。
……それとも、図書館の外で誰かに聞く?
あ、それより前にちゃんとお礼も言わないと。


「あ、あのー……」
「だから」
私がお礼を言おうとすると、その子が口を開いた。右手で持った月の本で、私の左側を指し示す。
そちら側を向くと、そこにはもう一人女の子がいた。それを見てハッとする。私はもう一人の女の子に気づかなかった。でもそれは存在感がないとか、透明だからというわけではなくて―――その子の前に、何冊もの、何十冊もの本が積まれていたせいだった。それはまるでバリケードのようにもう一人の女の子を囲み、守っている。
「彼女に聞いたらどう?」
指し示された子も私と同じような年齢で、人形の子よりもより読書に没頭していた。本のバリケードをよけて中を見ると、その子は両ページにびっしりと文字が書かれた本を読んでいた。それを、数十秒に一回のペースでページをめくっていく。難しい漢字も多くて、私はあっけにとられてしまった。
「す、すごいなぁ……」
「あの人なら、おそらくどこに何があるかも大体は把握していると思うのですね」

その子の目はせわしなく動き、文字を追い、文を追い、ページを追っていく。割って入るのは、人形の子よりも難しいと思った。
(何をまた躊躇してるんです、天理!)
そんな私の気も知らず、ディアナはまた私に発破をかけてくる。そうは言ってもディアナ、この子はすごく楽しそうに本を読んでるし……。
(確かに悪いかもしれませんが、天理の愛と私の顕現のためです!天理、後は任せましたよ!」
え、……?任せたって、どういう……


そして。
私がディアナに聞きなおそうとしたとき、私はその意味を先に理解した。でも、気づいたからといって止められるわけではなくて。
ディアナは新築でピカピカな床に「反射し」、擬似的に「顕現した」。力の足りないディアナは普段私の頭の中でしか喋れないけれど、鏡などに映れば話は別になる。
ディアナの声も、他の人に通じるのだ。
ただし、声が私と同じとあって基本的に参照性がおかしくなってしまうから……あんまり使わない。
でも、ディアナはそれを使ってしまった。

「あのーーーっ!いいですかーー!?」

他に人がいない、ということにもはや開き直ったディアナは、図書館中に響き渡る声で叫んだ。本を読んでいた子もさすがにディアナの声には気づいて、あわてて本を取り落としそうになる。
(後は任せましたよ天理ー!)
ディアナは役目を終えた顔をして床の反射から姿を消し、私はほとほと立ち尽くすことしかできない。そんな満足そうな顔をされても……うぅ。
「いたっ」
すると突然、横から頭を小さく本で叩かれた。
叩かれたほうを見ると、さっきの人形の子だった。私が本の子に話しかけようとしているのを見て席に戻ったはずだったけれど、戻ってきたみたい。
「うるさいのですね!」
「ご、ごめんなさい……」
私はぺこりと頭を下げた。
すると、さっきまで本を読んでいた子が口を開く。
「………………………………………………」
口を開いて、
「………………………………………………」
また閉じる。
「いたっ」
今度は本の女の子が人形の子に叩かれて、さっきの私とまったく同じ反応をとる。本の表紙だからそれほど痛くはないけれど、とりあえず「ぺちんっ」という音は聞こえる。
「あなたは静かすぎるのですね!」
「………………………」
それでも、本の女の子は喋ろうとしなかった。頬が赤く染まっているから、多分……恥ずかしがっているんだと思う。天理より酷いですね、とディアナが言ったけれど、確かにそうかもしれない。
人形の子はまだ怒っている。
「さっきも、私がここで読んでいいか聞いても頷くだけだったし……人形じゃないんだから、きちんと喋って欲しいのですね!」
「………………………」
了承したのか、本の子はこくりと頷いた。
ぺちんっ。
「いたっ」
ぺちんっ。
「いたっ」
ぺちんぺちんっ
「いたっいたっ」
…………。
「…………………」
ぺちんっ。
「いたっ」

「や、や、や……やめようよっ!」
私は何度も頭を叩いていた人形の子を止める。その子はちょっと笑っていて、意外と楽しんでいるようだった。制止しようとした私を見て、すっ、と本を差し出してくる。
「はい」
「………え?」

…………。

ぺちんっ。
「いたっ」
私に叩かれ、本の子は小さく声をもらした。
(何をしているんですか天理!)
ご、ごめん、思わず……。
私は本を人形の子に返した。そして、本の子へと向き合う。本の子は顔を赤くして、私をじっと睨んでいた。頬を膨らましているから、怒っている……と思う。
「ごめんなさい……」
(今日の天理は、なんだか謝ってばかりですね)
すると本の女の子は、また無言のまま頬の膨らみをしぼませた。許してくれたのだろうか。
私は不安ながらも、とりあえずゆるやかに笑ってみる。
に、にっこり。
相手の子も笑おうとしたのか、唇の端をひくひくとさせて……
…………。
こくん、と首を傾ける。
笑おうとして失敗しちゃったのかな?
本の子はすぐに、顔を赤くして首を直した。テイク2、私はもう一度小さく笑う。
に、にっこり。
本の子はまた笑おうとして、今度は目尻を震わせている。
…………。
そしてまた、こくん、と首を傾けた。


ぺちんぺちんっ。
「いたっ」
「いたっ」
(いたっ)
「いつまで会話せずにいるのですね!」
また、人形の子が痺れをきらした。どうしても会話のペースが遅れてしまうみたい。
(遅れるも何も始まってませんよ)
「本はレンズがないから、周りの景色が見えてどうも面倒くさいのですね……早めに問題を解決して!」
人形の子は、そう言って視線を本の子に向けた。
「この子が、地図の場所を知りたいって言ってるのですね」
私よりも先に言われてしまった。本の子ははっとした顔をして、右上の方を見つめている。考えているのだろう。
「あ、案内してくれませんか?」
私がそう聞くと、本の子はゆっくりと私の後ろを指差した。
「こ……こっち側?」
こくり、と本の子はうなずいた。
私は振り向いて、とりあえずそちら側へ歩いていく。本棚を一つ、二つ、そして、三つ抜けると―――――

そこには、本棚いっぱいに地図が並んでいた。舞島、鳴沢、そして私の住んでいた美里まで。逆に日本、アジア、世界地図まで。巨大な本棚にびっしりと並んでいた。
「ありましたね、天理……こんな近くに」
そ、そういうこともあるよ。
私はその本棚の中で、ちょうど目の前にあった「舞島市」の本を取る。少しだけ中身をのぞくと、そこにはきちんと地図が載っていた。地理は授業で勉強してあるので、地図はきちんと読める……と思う。とりあえず、これで問題は解決したはず、かな?

「……まったく、そんなことで私を煩わせないで欲しいのですね」
人形の子はため息を吐いて。月の本を抱えなおす。ごめんなさい、と私はさらにもう一度謝った。
「いいですよ、ちょっと……まあ、ちょっとですけど、楽しかったのですね」
そう言って、人形の子はもう一度人形を抱えなおした。
「さあ、ルナ、帰りましょう?」
「……ルナ?」
「この人形の名前よ。綺麗でしょう?この前、パパとママにプレゼントしてもらった人形なのですね。今日も三人でプラネタリウムなのです、いいでしょう?」
その子はにっこりと笑って胸を張った。プラネタリウム……学校の課外授業で一度行った事があるけれど、 幻想的ですごく面白かったのを覚えている。月が好きな子なら、きっと私の数倍は楽しめるのではないだろうか。

ましてや。
家族三人で見に行くとなれば、一層。

「というより」
人形の子は、また手に持っている本で私の左を指し示した。そこにいるのは、地図の場所を教えてくれた本の子。
「お礼とかなら、私じゃなくてこの人に言ったほうがいいのですね」
突然指されて、本の子は表情を強張らせた。頬を染めて、上半身をふらふらとさせる。目線はところせましと泳ぎ、口がぱくぱくと動く。
(やっぱり天理以上ですね……)
そ、そうだね。
私は本の子の前まで歩き、もう一度お礼を告げた。ありがとうございました、と。
「……………………」
…………。
「……………………」
「……………………」
…………。

「……………………」

人形の子が、持っている本を遠くですっと持ち上げる。
「!」
本の子は一瞬だけ体を揺らした。
「…………」
そして、口を開く。
「…………………ど、どうも………」


「……喋れるんですね」
人形の子がそういうと、私はくすりと笑った。それにつられて人形の子も頬を緩ませ、そして本の子も……口元を本で隠しつつ、肩をゆらした。



図書館の出口へ向かいつつ、私はディアナと話をしている。
「場所は確認できましたね。一応メモはしてきましたが、分かりますか?」
大丈夫だよ、もともと私の住んでいた家の隣だし。
「それもそうですね……」
それよりディアナ、図書館で叫んだりしたらやっぱりダメだよ、もうあんなこと……しないでよ?
「むぅ。まあ、少なくとも図書館ではしません」
図書館以外でもダメー!あの三人以外にも人がいたんだから!

地図で場所を確認した後、その地図のコーナーを曲がったところにある「郷土史」というコーナーにも人がいた。男の人とその子供と思われる男の子で、その子とも目があってしまった。きっと私が叫んだみたいに思われてるよ、あの男の子に……うぅ、恥ずかしい……。本の子みたいに、私も顔が赤くなる。
「大丈夫ですよ、あの男の子も、確か帰りに食べるアイスの話しかしていませんでしたし」
そ、そ、そういう問題?
でも、木梢町の本を見てたよね……あの人たちも舞島の人なのかな?
「天理よりはしっかりしてそうな子でしたけどね」
…………。


自動ドアを出ると、また町の賑やかな音が聞こえてくる。
桂馬くんの家の方向もわかったことだし、ここからは誰にも迷惑をかけずに向かおう!と決心をして歩き出した、

そのとき。

「天理、危ない!」
―――え。

私がディアナの声に気づいて振り向くと、私の目の前には丸い何かがあった。何かというより、こんな形をして向かってくるものは一つしかない。ボールだ。それもテニスボールでもサッカーボールでもなく、そのボールは茶色くて、トレードマークとなる縫い目があって。その一瞬でも分かった。

それは、バスケットボールだった。

気づいたときには時すでに遅し、私のおでこに跳ねたボールが直撃し、「いたっ」という声をあげて私は倒れこんだ。おしりから、思いっきり。
「て、天理!」
私の思考が停止していると、遠くから女性の声が聞こえた。


「ご、ごめんなさーい、だいじょーぶー!?もう、先輩が変なフェイント入れるからですよー!」
「ふん、お前は実践でもそんなこと言う気か?やったもん勝ちだ、やったもん勝ち。私のモットーだ」
「もー先輩!って、だいじょうぶー!?」


私は特にケガを負ったわけではなかったけど起き上がれず、小さくため息をついた。
これは多分……また、迷惑をかけちゃった……よね。


-----第三話につづく-----

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◆ 無題
見させていただきました。
天理と月夜と栞のスローテンポな感じがすごくいいです。
お話の構成とかもちゃんとなってて、第3話が早く見たいです!

ちなみに、pixivをやっています・・・。
花園迷太という名前です。
花園迷夢 2010/12/27(Mon)12:52:03 編集
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